薬剤師の年収って世間では高いイメージがあります。でも6年通ってこれだけ?って思う方も多いのも事実。
「薬剤師の年収って、本当に高いの?」
「世間では薬剤師の年収が高いと言われるけど……、自分の年収はけっこう低い」
「大卒の他学部の友達のほうが、給料がいいみたいだけど……」
という悩みをお持ちの薬剤師の方も多いのではないでしょうか。世間一般では「薬剤師の給料は高い」というイメージが定着しているようですが、自分の給料に満足できていない薬剤師の方も少なくありません。
そこで今回は薬剤師の年収が実際に低いのかを解説し、給料を上げる方法を紹介します。
この記事をお読みいただくことで、薬剤師年収の実状と背景を理解でき、自分の給料を上げるための具体的な方法を実践することができるでしょう。
もし、給料が安すぎると悩んでいて条件にあった職場を探しているなら大手の転職サイトを使うと効率的に転職活動を行うことができるでしょう。

正直6年通って年収500万とかだとやってらんないよね。
え?安すぎる…薬剤師の給料は実際に安いのか?
薬剤師の給料は低いのか、実際に平均年収を見ていきましょう。
厚生労働省の令和元年賃金構造基本統計調査の「職種別第1表」によると、薬剤師全体での平均年収は562万円であり、日本人の平均年収436万円(国税庁 令和元年分民間給与実態統計調査参照)を大きく上回る結果になっています。
薬剤師の給与の特徴として「薬剤師手当」がついていることが挙げられますが、この薬剤師手当があるため初任給が高く、20代後半で年収400万円超の年収となっています。
薬剤師は正社員だけでなく派遣の給料も高く、派遣薬剤師の平均時給は2,500円~3,000円となっています。
時給4000円近い派遣先もあるため、フルタイムに換算すれば年収600万円を越えることも可能です。
他の医療従事者の給料と比較
薬剤師の給料を医師、看護師など他の医療従事者の給料と比較した結果を以下の表にお示しします。条件を揃えるために、企業規模100~999人のデータを参照しました。
職種 | 平均年収 |
医師 | 1463万円 |
薬剤師 | 548万円 |
看護師 | 468万円 |
理学療法士・作業療法士 | 401万円 |
介護支援専門員(ケアマネージャー) | 394万円 |
(令和元年賃金構造基本統計調査 職種別第1表 職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)より算出)
薬剤師の平均年収は医師には及びませんが、他の医療従事者と比較して高いことが見て取れます。
一般の大卒者の給料と比較
次に大卒の一般労働者と薬剤師の年齢別賃金と比較して見てみましょう。こちらも、企業規模100~999人の条件で算出しています。
年齢 | 大卒一般労働者の平均年収(万円) | 薬剤師の平均年収(万円) |
全年齢 | 564 | 568 |
20~24歳 | 318 | 328 |
25~29歳 | 412 | 447 |
30~34歳 | 478 | 488 |
35~39歳 | 546 | 547 |
40~44歳 | 623 | 598 |
45~49歳 | 689 | 685 |
50~54歳 | 785 | 648 |
55~59歳 | 780 | 664 |
60~64歳 | 566 | 557 |
65~69歳 | 516 | 517 |
70歳~ | 520 | 397 |
令和2年賃金構造基本統計調査 第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額より算出
薬剤師は初任給が高く、30代後半ごろまでは一般の大卒労働者の平均年収よりも高い傾向が見られます。
しかし40代以降では、薬剤師は一般の大卒労働者よりも平均年収が低くなっている状況です。
薬剤師の女性比率が高いことも平均年収を押し下げている一因ではありますが、薬剤師の収入は伸びづらく、生涯年収で考えると「年収が低い」と考える方も多いのです。
薬剤師の給料が安いと言われる理由


薬剤師の給料は日本全体の平均年収と比べれば十分に高いと言えますが、それでも「給料が安い」と言われるのには、3つの理由があります。
【薬剤師の給料が安いと言われる3つの理由】
- 昇給しづらい
- 医師の給料と比較される
- 高額な学費に見合わない
それぞれの理由を順番に見ていきましょう。
薬剤師は昇給しづらく給与は頭打ちなり安い
薬剤師は薬剤師手当を貰えるので初任給は高くなるのですが、昇給しづらく30歳代後半以降の給料で伸び悩む傾向が見られます。
【薬剤師が昇給しづらい理由】
- 役職手当のあるポストにつける薬剤師の人数が限られている
- 年次昇給が少ない
といった事情が挙げられます。
年次昇給が少ないケースはとくに中小の調剤薬局で見られやすいでしょう。
中小薬局の中には、人事考課制度が明確に定まっておらず、経営者の判断で給与が決定する会社もあります。
一方、大手の調剤薬局や病院では明確な昇給基準を設定している職場が多いようです。
医師の年収と比較している
他職種の医療従事者と比べても薬剤師の給料は高いのですが、医師の給料には及びません。
医師と薬剤師の学費や年収を以下に比較します。
職種 | 医師 | 薬剤師 |
大学 | 医学部(6年制) | 薬学部(6年制) |
学費 | 国公立:約400万円
私立:約3,000万円 | 国公立:約350万円
私立:約1,200万円 |
年収 | 約1,200万~2,000万円 | 約500万~600万円 |
医師・薬剤師ともに6年制大学卒の国家資格となりますが、薬剤師の給料は医師の半分以下となることが多いです。そのため、「薬剤師の年収は低い」という不満が出ているようです。
しかし医師は患者に対してより重大な責任を持つ場面も多く、医学部の学費は薬学部よりもさらに高額です。
やみくもに「薬剤師のほうが医師よりも給料が安い」と不満を持つのではなく、職種や背景の違いも理解しておく必要があるのかもしれません。
6年制薬学部の学費に見合わない
給料額が、薬学部の学費の高さに見合わないと感じる薬剤師もいます。
調剤薬局や病院で勤務する薬剤師は私立の6年制薬学部出身者が多く、通常、私立薬学部では入学から卒業までの間に1,200万円程度の学費が必要となります。
一般的な4年制大学の卒業生よりも数百万円多い学費と長い年月を費やして卒業しているという背景があるため、「それに見合った給与を得たい」と考える薬剤師が多いのです。。
また、一般的なサラリーマンと比較しても給与は頭打ちでそこそこの年収で止まってしまいます。
6年通ったのに周りのサラリーマンに給与を抜かれてしまうのは解せないでしょう。
薬剤師の給料に影響する要素【職種・地域・規模】


「薬剤師の給料は安い」とする声も多く上がっていますが、給料は年齢や個人の能力だけでなく、業種や勤務地、勤め先の企業規模による影響も受けています。
ここでは、薬剤師の給料に影響を与える3つの要素を解説します。
業種別の薬剤師給与
薬剤師の主な勤務先として調剤薬局、ドラッグストア、病院、企業が挙げられますが、薬剤師の給与は業種ごとにかなりの差があります。
業種別の平均年収をお示ししました。
業種 都市部エリア その他エリア 調剤薬局 年収507.1万円 年収522.1万円 ドラッグストア(調剤併設を含む) 年収542.2万円 年収556.3万円 病院 年収467.2万円 年収490.8万円 企業(製薬・医薬品卸・治験など) 年収504.8万円 年収532.0万円
上の表のように、病院<企業・調剤薬局<ドラッグストアの順に高年収となる傾向が見られます。
病院は薬剤師の業種の中では最も平均年収が低く、「激務のわりに給料が伸びない」という不満を抱く薬剤師が多いようです。
なお、都市部とその他エリアで年収に開きがあるのは、薬剤師の需要と供給のバランスの影響を受けているためです。
都市部は人材が豊富であるため年収が上がりづらく、郊外は薬剤師が不足している傾向にあるため年収が高い傾向が見られます。
都道府県別の薬剤師給与
勤務地の都道府県によっても薬剤師の給与には大きな差が生じます。
2019年の1位の静岡県と47位の長崎県では、年収額にして270万円程度の差が開いていました。
ただし、年収の都道府県別ランキングは毎年入れ替わりが激しく、薬剤師の調査人数は都道府県によって100人~6000人規模の差があるため、各都道府県の薬剤師の平均年収を正確に表したものではありません。
あくまで参考としてとらえてください。
順位 | 都道府県 | 平均年収(万円) |
1 | 静岡県 | 698.7 |
2 | 長野県 | 689.5 |
3 | 高知 | 642.7 |
… | … | … |
45 | 新潟 | 447.2 |
46 | 徳島 | 444.0 |
47 | 長崎 | 428.2 |
都心よりも地方のほうが給料は高くなる傾向が見られますが、「地方なら高年収」という単純な図式になるわけでもありません。
地域の年収差は「薬剤師の需給バランス」や「薬剤師の年齢」「月間労働時間」など複数の要素が影響しています。
事業規模別の薬剤師給与
薬剤師の給料は企業の規模によっても変わってきます。
企業規模計 | 平均年収(万円) |
全体(10人以上) | 565 |
1000人以上 | 540 |
100~999人 | 568 |
10~99人 | 610 |
参考:令和2年賃金構造基本統計調査 第5表 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
世間一般では大企業ほど給料が高いイメージが浸透していますが、薬剤師業界においては企業内人数が少ない小規模の会社のほうが高い傾向があります。
中小規模の会社で働く薬剤師の平均年収が高い理由として、以下の3つのことが挙げられます。
【中小規模の会社で働く薬剤師の年収が高い理由】
- 新卒雇用が少なく、従業員の平均年齢が高い
- 経験者を取得するために高年収を提示・採用している
- 中小企業の方が、経営者と賃金交渉しやすい
中小薬局では既卒者を高年収で採用しているケースが多く、勤務薬剤師が高年齢だと年収も高くなる傾向があるため、平均年収が高めとなります。
中小の調剤薬局では人事考課制度が整っていない場合もあり、裏を返せば経営者との賃金交渉もしやすいと考えることができます。
大手の調剤薬局は新卒採用が多いのですが、勤続年数が短ければ給料も低い傾向が見られます。
薬剤師の給料を増やす方法
薬剤師の給料を増やす方法は次の5通りです。おすすめ度とともに、以下の表にしました。
方法 | ポイント | おすすめ度* |
資格取得手当をもらう |
| 〇~△
(勤め先の体制による) |
昇進・給与交渉する |
| ◎~△
(勤め先の体制による) |
副業する |
| △ |
派遣薬剤師として転職 |
| 〇~△ |
高年収の会社に転職 |
| ◎ |
*おすすめ度は、給料アップの効率と実現可能性を考慮して◎(確実性が高い)、〇(可能である)、△(困難が伴う)の三段階で記載しています。
それぞれの方法について順番に見ていきましょう。
資格取得でキャリアアップ
認定薬剤師や専門薬剤師の資格を取得することで、役職につきやすくなったり、資格手当がついて給料アップしたりする可能性があります。
認定薬剤師・専門薬剤師とは
専門薬剤師・認定薬剤師は、薬剤師の中でも特に知識や技能が高いエキスパートとして認められた薬剤師のことです。
日本病院薬剤師会・日本医療薬学会では、特に専門性が要求される「がん」「精神科」「HIV感染症」「妊婦・授乳婦」「感染制御」の5つの領域で専門薬剤師・認定薬剤師を設定しており、各領域で実務経験や実績があり、研修や講習を経て試験に合格すると認定薬剤師になることができます。
さらに専門性を高めた薬剤師が「専門薬剤師」として、医療スタッフへの教育や指導も行う立場となるのです。
ただし、これらの資格を取得しても手当がつかない会社もあるので注意が必要。
資格を取りたいと希望していても、サポート体制のない会社だと時間や金銭的な余裕がない方もいるでしょう。そのような場合には、「資格取得支援」体制のある会社に転職するのも一つの方法です。
専門薬剤師などの資格を積極的に推奨している職場であれば、自分の専門性を高めながら働くことができ、年収アップも期待できて一石二鳥と言えるでしょう。
現職で昇進・給与交渉
今勤めている職場で昇進したり、給与交渉したりして年収を上げる方法です。
とくに中小の調剤薬局では経営者と直接交渉する機会を得やすいでしょう。
病院や大手調剤薬局では勤続年数などによって昇給基準が決まっていることが多く、交渉による大幅な昇給が難しいケースもあります。
副業などで薬剤師以外の仕事にも取り組む
副業収入を得てトータルの収入を上げる方法です。派遣薬剤師や他薬局でのパート勤務を併用、あるいはWebライターなど在宅での副業ワークがおすすめです。
しかし、副業を禁止している会社もあるため、勤め先の就業規定をしっかり確認しなければなりません。
副業で時間や体力を削られ、本業がおろそかになる危険もあるので注意しましょう。
また、管理薬剤師は医薬品医療機器等法 第7条の3の定めにより薬事関連の副業・兼業が原則禁止されています。
高時給の派遣薬剤師になる
勤務している会社を辞めて、高時給の派遣薬剤師になるのも一つの方法と言えるでしょう。
派遣薬剤師では時給3,000円以上の求人も多く見られ、仮に時給3000円でフルタイム勤務(1日8時間、週5日、52週/年)として年収を計算すると、
3,000(円)×8(時間)×5(日)×52(週)=624万円(年収)
600万円を越える年収となります。
正社員薬剤師の平均年収が約562万円であり、派遣のフルタイム勤務は正社員の平均年収を上回る年収額となります。
派遣薬剤師は、正社員と比べて休暇を取りやすく、残業もほぼゼロであるため子育て世代のママ薬剤師などにおすすめと言えるかもしれません。
ただし、派遣薬剤師として働く場合は次の5つのデメリットに十分注意してください。
【派遣薬剤師のデメリットとは】
- ボーナス・退職金が出ない
- 年次昇給が無い
- 契約期間が定まっており、1か所で働き続けることが出来ない
- 派遣薬剤師をよそ者扱いするスタッフがいる可能性もある
- 派遣の求人を出している薬局は基本的に多忙である
特に注意すべきなのは、ボーナスや退職金が出ず、年次昇給がないということ。
そのため、年収アップだけを目的に高時給派遣に転身することはリスクを伴います。
働き方を見直して、「家庭と仕事を両立したい」などの場合の収入アップ手段としてはおすすめと言えるでしょう。
給料の高い職場に転職する
今の職場よりも高年収な職場を選んで転職すれば、確実に年収アップを叶えることができます。
【薬剤師が年収を上げるには、どんな職場に転職すべき?】
- 求人票に提示されている給与金額が高い職場
- 資格支援制度のある職場(求人票に記載あり)
- 給与交渉を行いやすい中小の調剤薬局
- 給与水準の高い地域(都道府県)の職場
薬剤師の資格取得支援制度のある職場に転職すると、資格取得に対する周囲の理解が得られやすく、金銭面でのフォローも望めます。
資格を取得することで、キャリアアップと年収アップを同時に目指すことが可能となるでしょう。
また、前述のように中小の調剤薬局は昇給制度が整っていない場合もありますが、経営者との距離が近い分、直接交渉によって年収を上げやすい環境であると言えます。
都道府県ごとに薬剤師の年収は大きく異なるため、給与の高い県で働くという選択肢もあります。年収を上げるという目的だけで地方へ移住するのはあまり現実的ではありませんが、ライフプランの見直しを機に地元の職場に転職するというのも一つの方法かもしれません。
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まとめ:能力のある方は薬剤師の年収は低い…と思うかも


- 薬剤師は初任給が高いが昇給しづらいなどの事情により、意外と年収が低い
- 年収を上げるにはスキルアップや昇進をする必要がある
- 現在の職場で昇給が難しい場合には、転職が現実的
- 転職サイトのサポートを受ければ好条件の求人を効率よく探せる
以上、薬剤師の年収が低い理由と年収を上げる方法について解説しました。
今の職場で給料アップを目指す方も、転職により年収アップを志す方も、キャリアプランをしっかり見据えて自分のスキルを高めていきましょう。みなさんの理想の年収実現を心より応援しています!
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