「薬剤師1年目だけれど、もう限界……」
「転職したいけれど、さすがに1年目で辞めたら職歴に傷がつく?」
薬剤師1年目。希望を胸に働き始めたはずなのに、実際に働いてみるとつらいことの連続で「もう辞めたい」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
辞めたくなる理由は、その会社ならではの問題であったり、新卒ならではの未熟さであったりとさまざまです。
結論から言うと、新卒薬剤師でも転職することは可能です。
無理に働いて心身を病んでしまうと、今後の就労にも支障をきたしかねないため、勤続年数にこだわりすぎずに速やかに転職したほうが良いパターンもあります。
ただ、辞める前に問題点をしっかり掘り下げ、今の職場で対処できるか見極めることが欠かせません。
この記事では、新卒薬剤師が辞めたくなる理由ととるべき選択肢についてお伝えします。この記事をお読みになると、いま転職すべきか否かを冷静に判断できるようになるでしょう。

新卒薬剤師はまだまだ需要がああるし、20代で転職する薬剤師なんてたくさんいるかた気にせずやめてOK!
新卒薬剤師が辞めたくなる理由
新卒薬剤師が辞めたくなったときは、「どうして辞めたいのか」の理由を見極めることが重要です。
理由があいまいなまま「なんとなく合わない」というだけで転職に踏み切ってしまうと、転職先でも同じ問題を繰り返しかねないので注意しましょう。
新卒薬剤師が辞めたいと思う6つの理由を紹介します。
忙しい・ミスが多い
毎日仕事が忙しくてつらくなり、辞めたくなる新卒薬剤師の方が多いです。
調剤薬局や病院の薬剤部で働いていると、立て続けに処方せんが届けられ朝から晩まで立ちっぱなしで調剤ばかりしていることも。
また、慌ただしい作業環境の中で馴れない調剤などを行っていると、ミスが重なって上司や先輩から叱られることもあるかもしれません。
新卒薬剤師はまだまだ経験が浅いため、計数調剤などの基本業務中のミスは仕方のないことでもあります。
忙しさと自分の不馴れでミスが続けば、「薬剤師を辞めたい」と思ってしまうこともあるでしょう。
給与が低い・残業代が申請できない
新卒よりもむしろ数年働いた薬剤師に多い悩みではありますが、昇給が少なかったりもともとの給料が低かったりすると、辞めたいと考えるようになります。
薬剤師の給料は職種ごとに異なり、一般的には病院<調剤薬局<ドラッグストア<製薬企業の順に給料が高いです。
他職種に就職した友人と比較して給料が低いと、「この会社を辞めたい」と考えることも。
また、サービス残業を強いられる風土の職場では、「働いているわりに給料が低い」という状態から辞めたくなる新卒薬剤師もいるでしょう。
労働基準法第24条によると「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めてられており、原則的には1日あたりの残業時間は1分単位で全額支払われるべきものです。
「30分未満の残業は切り捨て」などのルールは、本来は認められません。
教育体制が整っていない
教育体制・研修システムが整っていない職場に新卒薬剤師として就職してしまうと、満足な教育が受けられずに「やめたい」という不満につながりやすいです。
社会人としても薬剤師としても新米なのに、基礎的な教育が受けられなければ不安を抱えるのも無理はありません。
大手企業では新人研修制度が整っていることが一般的ですが、中小の病院・薬局では研修制度が不十分だったり、そもそも存在しなかったりするケースがあります。
残業が多い
残業が多い職場に勤める新卒薬剤師も、大変さから辞めたいと思うケースがあります。目安として、月20時間を超える残業がある場合は「残業の多い職場」と言えるでしょう。
労働基準法32条の定めにより「1日8時間以内」「週40時間以内」を法定労働時間とされており、法定労働時間を越える時間での労働は時間外労働とされ、「年間720時間以内」、「月平均80時間以内」などの上限が定められています。
令和二年賃金構造基本統計調査の「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」によると、薬剤師の超過実労働時間(就労規則などで定められた就業時間の範囲外で実際に働いた時間)は、10時間程度であることが分かります。
月の勤務日数20日で割ると、おおむね1日30分程度の残業は標準的と言えるでしょう。
その倍の1日1時間を超える残業(月20時間以上)が常習化している職場は、薬剤師にとっては「残業が多い」と認識されうる職場です。
また、調剤薬局の場合、忙しさや残業時間が店舗ごとに異なるケースもあるでしょう。
全社的に残業時間が多い場合には、残業が当たり前の会社風土になっている可能性があります。
連休・有給を取れない場合や、休日当番・電話当番が頻繁な場合も、不満が溜まって辞めたくなる原因になるので注意が必要です。
人間関係が悪い
上司や同僚との人間関係の悪さから、辞めたいと思う薬剤師は多いです。
薬剤師の転職理由として、人間関係のトラブルはしばしば挙げられるポイントです。
調剤薬局や病院は閉鎖的な空間になりがちなので、一度人間関係がこじれてしまうとなかなか解消しづらい環境と言えるでしょう。
新人や仕事に不馴れなスタッフへのパワハラや、スタッフ間での無視やえこひいきが横行しているような職場では、辞めたいと思うのも無理はありません。
通勤時間が長い
大手の調剤薬局などでは、通勤時間90分以内ならどこでも配属可能といった条件で雇用される場合があります。
しかし、実際に家から遠い店舗に配属されると、往復が大変で「もう、この会社では働けない」と限界を感じる新卒薬剤師も少なくありません。
入社前に、異動の有無などの条件を確認しておく必要があります。家賃補助を貰って店舗付近に引っ越すのも現実的な対処法です。
イメージとのギャップがあった
「病院薬剤師になったけれど、私には合わないみたい」
「調剤薬局に就職したものの、やっぱり病院薬剤師になりたかった」
「今の薬局は在宅業務に進出していないから不満」
「中小に就職したけれど、思った以上に経営状態が悪そう……」
など、実際に現場で働いてみると、それまで気づかなかったギャップや問題点が見えてくることがあります。
「こんなはずじゃなかった!」という不満につながり、辞めたいと思う新卒薬剤師もいるのです。
ギャップで辞めたくなった場合には、その職場で一定年数経験を積んでから転職するのも一つです。
辞めたいときの5つの対策


新卒薬剤師が辞めたくなったとき、実際に取りうる選択肢は次の5つです。
<辞めたくなった新卒薬剤師の選択肢>
- 今すぐ転職する
- 馴れるまで働き続ける
- 店舗異動する
- 問題改善を上司に交渉する
- 経験を重ねた上で転職する
順番に見ていきましょう。
健康を損ねる危険があるときはすぐ転職を考えて!
「今の会社でこれ以上働いていたら、確実に心身を病んでしまう……」そのような場合は勤務年数にこだわらず転職することをおすすめします。
なぜなら、持病があると働くこと自体が困難になり、再就職でも不利になる可能性があるからです。
新卒で勤務1年未満でも、転職は可能です。周囲の人から「もう辞めるつもりなの?」と非難されたとしても、自分の心身を守ることを最優先とするべきでしょう。
ただ、「ともかくこの会社以外ならどこでもいい!」と勢いだけで転職を決めると、結局次の職場でも同じような問題で苦しむ可能性が高くなります。
現職の何が問題だったのか、どんな転職先を選べばその問題は解消できるのかを理解する必要があります。
転職サイトのコンサルタントに相談すると、客観的に問題点を指摘してもらうことも可能です。
馴れと経験で解決できる問題もある
辞めたいと思うほど深刻な悩みでも、業務に馴れて経験を積むと解決できるものも多いです。
<こんな悩みは馴れと経験で解消可能>
- 職場が忙しい
- 自分の仕事スピードが遅くてついていけない
- ミスばかりで怒られてしまう
研修・教育体制が整っていない職場で新卒薬剤師が働くのは精神的にも肉体的にも大変ですが、それも経験と自己学習でカバー可能な面があります。
新卒薬剤師は社会人になったばかりなので、まだ社会人生活に不馴れな状態です。
転職を意識すること自体は問題ありませんが、安易に辞めないで経験を積むのも一つです。
経験を積むと、次の転職で有利になる可能性が高まるためです。
店舗異動を申し出る
別店舗への異動で解消できそうな問題の場合は、上司や人事担当に配属店舗の異動を申し出るのも有効です。
<こんなときは異動を申し出るのもおすすめ>
- 性格などに問題のあるスタッフがいて勤務困難
- 自分の働いている店舗だけ残業が多い・極端に忙しい
- 通勤時間が長すぎる
辞めたくなる問題点が今の店舗に限ったケースならば、異動で問題が解決できる可能性があります。
全社的に残業が多い、閉鎖的・排他的な人間関係で固定されているなどの場合には、異動しても解消できない恐れがあるので注意しましょう。
給与交渉できる職場もある
給与が極端に低い職場では、給与交渉を検討するのも一つです。とくに中小の薬局などでは、「辞められるくらいなら昇給して引き留めたい」と考える経営者もいます。
大手の調剤薬局や病院では、昇給体勢が明確に定まっているため給与交渉が無駄に終わる可能性もあるでしょう。
また、基本給や諸手当は求人票に明記されているはずなので、あらかじめ承知した上で内定に進んでいるはずです。
働き始めてから「給与が低い!」と気づくことのないよう、転職の際は諸条件を十分に確認することが欠かせません。
経験を重ねてから転職する
「今すぐ辞めたい!」と思う場合でも、もうしばらく働き続けて経験を積んでから転職するほうがいい場合もあります。
<こんなケースでは、もうしばらく働くのもおすすめ>
- 不満だが、「もう限界!」というほどではない
- 店舗異動や上司との交渉で、問題解決できそう
「心身の健康を損ねるほどつらいか否か」で判断すると良いでしょう。
新卒でも転職可能ではありますが、2~3年以上勤務経験がある薬剤師のほうが、スキルを見込まれ転職が有利になりやすいのも事実です。
「今の仕事だからこそ経験できること」が何かしらあるのであれば、それを軸にスキルアップし、将来的な転職に備えるのもおすすめです。
1年目の薬剤師が転職するメリット・デメリット


1年目の薬剤師でも、転職することは可能です。
しかし、メリットとデメリットを十分に把握した上で、自分が今転職すべきか真剣に吟味する必要があります。
新卒薬剤師が転職するデメリット
- 他人から「すぐ辞めた人」と言われる
職場の上司・同僚、あるいは家族などから「もう辞めるの?」「そんなことで将来やっていけるの?」と辛口の意見を言われることもあるでしょう。
しかし、胸を傷める必要はありません。
自分の人生を決定するのは、他ならぬあなた自身だからです。人の言葉に振り回されるより、自分のキャリアプランに則った行動をとることをおすすめします。
新卒で辞めると、職歴に傷がつくのか?
「1年未満で辞めたら職歴に傷がつくのでは?」と不安を持つ新卒薬剤師の声がしばしば聞かれます。
結論から言うと、傷がつかないわけではありませんが転職は可能です。
次の職場で長く働いたり実績をあげられたりできれば、新卒時の「傷」は目立たなくなるでしょう。
一方で転職ばかり繰り返していると、履歴書が転職だらけになって不利になりかねないので、転職先はしっかりと吟味する必要があります。
転職時期については、1年未満でも1年~2年未満でも大差ありません。1年程度勤務しただけでは、薬剤師としては未完成であることに変わりないためです。
とはいえ、実際に1年目、2年目で初めての転職を経験している薬剤師は多いので、年数にばかりにこだわる必要はありません。
薬キャリのアンケート調査によると、最初の転職を1年目に経験している薬剤師は全体の8%に及びました。
新卒薬剤師が転職するメリット
- 心身を病まずに新しい環境でやり直せる
- 現職での失敗を生かして転職先を探せる
現在の苦しみをリセットして新しい環境でやり直せるのが最大のメリットです。研修の充実度や残業の風土など、学生時代には思い至らなかった問題点も、実際に社会人として働いたことで把握することができたはずです。
勤務経験と反省を生かして、次のステップにつなげることができます。
すぐに転職しなくても、薬剤師転職サイトへ相談できる


転職サイトは、「今すぐ転職したい!」という薬剤師以外も利用することができます。
<こんな薬剤師も転職サイトに登録可能>
- 今は転職する気がないが、将来的には転職したい
- 自分が今転職すべきか否か、悩んでいる
- 将来の転職に備えて薬剤師市場の現状を把握しておきたい
転職サイトに登録すると、担当のコンサルタントとメールや対面で相談できるため、転職やキャリアプランに関する悩みを聞いてもらうことができます。
サイトごとに特色があり、スピーディな転職を得意とするサイトや、中長期的に転職先を吟味して提案してくれるサイトなどさまざまです。
転職サイトに登録すると求人情報を提示されますが、「今はまだ転職するか決めかねている」状態であることを正直に伝えるとよいでしょう。
また、相談の結果「今はまだ転職すべき状態ではない」とコンサルタント側から言われる場合もあります。
新卒薬剤師も転職できる!辞めたい理由を見つめて判断しよう


- 新卒薬剤師でも転職先はある
- 1年未満で辞めても2年未満で辞めても大差ない
- 現職で健康を損ねそうなら、転職を積極的に検討
- 転職を決めかねている状態でも転職サイトに相談できる
以上、新卒薬剤師が辞めたくなる理由と5つの対処法をお伝えしました。
薬剤師の場合、1年目で辞めても転職先を見つけることは可能です。思い詰めずに柔軟に行動しましょう。
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