「うちの薬局は一人薬剤師だから、つらい」
「どうすれば一人薬剤師の状態をやめることができる？」
薬局内にいる薬剤師は自分だけ……。「一人薬剤師」は自分ひとりで調剤・監査から投薬、薬歴記入までの薬剤師業務を一人で行わなければなりません。
責任や負荷の大きさから、悩んでいる一人薬剤師の方も多くいらっしゃいます。
結論から言うと、一人薬剤師は会社の方針で配置されていることがほとんどなので、一人薬剤師の状態を脱するには転職するのが現実的です。
今回は、一人薬剤師がつらい理由や違法か否かの基準、一人薬剤師をやめる方法などを解説します。
この記事をお読みになると、自分に適した働き方や職場の探し方を検討するとき役立てることができます。
一人薬剤師とは？
一人薬剤師とは、店舗内に他の薬剤師がいない状態で、処方監査から調剤、監査、投薬、薬歴の記入まで一通りの薬剤師業務をひとりで行う薬剤師のこと。
事務スタッフの手が空かない状態だと、処方せん応需やレセコンの入力、在庫管理や発注なども行います。
たとえば中小規模の調剤薬局店舗で、一日あたりの処方せん枚数が40枚以下の場合などは、会社の判断で一人薬剤師を任される場合があります。
＜処方せん40枚ルールとは？＞
薬局業務運営ガイドラインの必要薬剤師数のルールによると、1ヶ月に応需した処方せん枚数を稼働日数で割った数字（つまり、1日当たりの処方せん応需枚数）が、40枚を超えない場合の薬剤師数は1人でよいとされています。
眼科、耳鼻咽喉科と歯科の処方せん数については、3分の2に換算して算出します。（参考：東京都福祉保健局ホームページ）
ただし、近年この「40枚ルール」は見直しを求められており、今後変更される可能性があります。
また、普段は2人以上の薬剤師で業務を行っている場合でも、同僚の急な欠勤などで一時的に一人薬剤師となる場合もあるでしょう。
大手の調剤薬局でも、人員の少ないエリアや比較的すいている時間帯では、一時的に一人薬剤師を任されることがあります。
今回の記事では、慢性的にひとりで業務を回さなければならない薬剤師のことを「一人薬剤師」として解説します。
一人薬剤師がつらい理由
一人薬剤師でもゆとりがあって「ひま」と感じる職場もある一方、ひとりで働くには多忙すぎて、つらい職場もあるのが実状です。
一人薬剤師がつらくなる理由として、次の5つが挙げられます。
業務量が多い
複数の薬剤師で分担すれば問題なく執り行える業務でも、ひとりで行うと業務過多となる場合があります。
仮に処方せん枚数が少なめな場合でも、処方せん一枚当たりの剤数が多かったり、ハイリスク薬が多く含まれていたりする場合には、調剤の負担が大きくなります。
とくに取り扱う医薬品数の多い薬局では、業務量の多さから負担を感じる薬剤師が多いようです。
ダブルチェックがない
薬剤師が一人しかいない職場では、監査も自分で行うためダブルチェックが行えず、ピッキングのミスや併用禁忌の見逃しなどに気づきにくくなる恐れがあります。
監査支援システムの整っている会社ならば比較的安心ですが、薬剤師による目視だけを頼りに監査を行っている薬局では、一人薬剤師にかかる責任は非常に大きくなります。
昼休みを取れない
薬剤師がひとりしかいなければ、昼休みに患者が来たときなど、休憩を中断して応対せざるを得ません。
門前クリニックの診療時間に合わせて日中に閉局時間を設けている場合などには、昼休みをきちんととることができるかもしれません。
しかし閉局時間のない薬局では、満足に休憩をとれずに働き続ける一人薬剤師も多いようです。
患者の待ち時間が長くなる
ひとりですべての薬剤師業務を行うため、来局患者が集中したり、欠品処理が発生したり、一包化調剤などが入ったりした場合には、待ち時間が長くなる恐れがあります。
事情をわかってくれる常連の患者さんならば、処方せんを預けて出直してくれることもあるでしょう。しかし急いでいる患者さんからは、厳しいクレームを受けることもあるかもしれません。
有給休暇を取れない
店舗内に他の薬剤師がいないため、有給休暇を取りづらい状況があります。
普段のシフト休については他店舗からのヘルプ体制が整っていても、有給休暇の場合は申請しづらく、有給未消化になってしまう一人薬剤師も多いのではないでしょうか。
一人薬剤師が違法となる職場とは？
店舗が一人薬剤師になること自体は違法ではありませんが、労働環境次第では労働基準法に違反して「違法」となる恐れがあります。
休憩が取れない
労働基準法第34条により、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は45分以上、労働時間が8時間を超える場合は1時間以上の休憩を労働者に与えることが義務付けられています。
昼休み中の電話や来客対応は業務とみなされるため、昼休みが中断された場合には、会社は別途休憩を与えなければならないことになっています（参考：厚生労働省ホームページ）。
しかし、一人薬剤師の場合は、休憩についてあいまいにされる職場もあるでしょう。上司に「休憩が取れない」と相談しても「なんとか工夫して、きちんと休憩をとるように」などとお茶を濁されてしまうケースが見られるようです。
人員配置の問題ですから、自分ひとりで「なんとかきちんと」休むのは困難と言えます。
有給休暇が取れない
労働基準法39条の定めにより、一定の要件を満たしたすべての労働者は年次有給休暇を与えられることになっています。
有給休暇が認められないことは、本来は違法です（参考：厚生労働省ホームページ）。
なお、個人事業主の薬局経営者が一人薬剤師をしている場合には、労働基準法が当てはまらないので休憩や有給休暇がなくても違法にはなりません。
「雇われる立場の薬剤師には、労働基準法で休憩や有給が認められている」という点がポイントです。
一人薬剤師のメリット
一人薬剤師は大変なことばかり……というイメージを持っている薬剤師の方も多いのですが、一人薬剤師には意外なメリットがあります。
それは、「職場内の人間関係に悩まされにくい」という点。
薬局は狭くて閉鎖的な環境であることが多く、人間関係で大きなストレスを抱えることがあります。しかし一人薬剤師なら、他の薬剤師がいないため、自分のやり方・個性を生かしやすい環境と言えます。
また、一人薬剤師を確保するために、高めの水準で給料を設定している会社もあるようです。とくに処方せん枚数が少なく、処方内容が比較的「軽い」薬局では、一人薬剤師のメリットが大きいかもしれません。
一人薬剤師の状態から脱出するには？
「一人薬剤師がつらい」、「上司・同僚のいる薬局で働きたい」という方に、一人薬剤師を脱出する解決法をお伝えします。
結論的には、一人薬剤師を推進していない薬局への転職を検討するのが現実的です。
今の会社に相談してもほぼ無意味
一人薬剤師を任されている現在の会社に相談しても、残念ながら一人薬剤師が解消される可能性は低いです。
なぜなら、人員配置は会社全体の方針を反映しているからです。
他店舗に異動できた場合でも、異動先でも結局また一人薬剤師を任されてしまうという事態が起こり得ます。
異動を打診された場合には、異動先の人員配置や、一人薬剤師が常態化されていないかどうかを十分に確認しましょう。
【方法は一つ】一人薬剤師ではない職場へ転職
一人薬剤師状態から確実に脱出するためには、一人薬剤師を推進していない調剤薬局への転職を検討しましょう。
転職時であれば、内定前に一人薬剤師の有無をチェックすることができるからです。
転職で注意すること
転職時には年収や雇用条件などに目が行きがちですが、本来の問題点であった「一人薬剤師の有無」のチェックを必ず行うようにしましょう。
転職後にまた一人薬剤師を任されてしまうようでは、せっかくの転職が無意味になってしまうからです。
一人薬剤師の状態から脱却したい方は、転職時に以下の2ポイントを意識することをおすすめします。
個人薬局より大手を検討
一人薬剤師を避けたい方は、個人薬局よりも大手を検討することをおすすめします。
大手調剤薬局の中にも、エリアによっては一人薬剤師で経営している店舗もありますが、多人数で運営している店舗の選択肢が多くなるからです。
大手の調剤薬局は、業務拡大のために店舗数を増やす方向にあり、薬剤師を積極的に採用している流れがあります。社内全体の薬剤師数が多ければ、いざという時の交代要員を確保できるのも安心点と言えるのではないでしょうか。
一方、個人薬局ではそもそもの薬剤師人員が少ないため、一人薬剤師をせざるを得ない状況に追い込まれる可能性が高くなります。たとえば「経営者と自分だけしか薬剤師がいない」という店舗だと、一人薬剤師になる時間帯は高確率で発生します。
転職先の内情チェックは必須
転職前に、その店舗で一人薬剤師が常態化していないかどうか、実態を把握しておく必要があります。
内情チェックは絶対に行いましょう。
面接時に「一人薬剤師をしなくて良い」と言われていたにもかかわらず、実際に入職したら、結局また一人薬剤師を任されてしまった……というケースも十分に起こり得るからです。
可能なら、内定前に薬局内の薬剤師と直接話す機会を作ってもらい、職場の雰囲気を調べておくと安心です。
自分一人で転職活動を行っている場合、店舗の内情を把握したり、勤務薬剤師と対話の機会を持ったりするのは非常に難しいです。
しかし転職サイトのコンサルタントを介すると、有利に進めやすくなります。
一人薬剤師の転職におすすめの転職サイト
一人薬剤師を避けるためには、職場の内情を詳しく把握できているコンサルタントに相談することが欠かせません。
コンサルタントと密接に連携しやすく、内情把握に優れている転職サイトは次の3つです。
マイナビ薬剤師
マイナビ薬剤師は国内大手の人材紹介会社であるマイナビが運営する薬剤師専門の転職サイト。
全国15カ所の拠点があり、各地域の病院・薬局情報を豊富に取り揃えています。全国の病院公開求人数は2,800件を越えています（非公開求人を除く・2021年11月9日時点 薬マニ編集部調べ）。
マイナビ薬剤師は「会う姿勢」を重視しているサイトであるため、担当キャリアコンサルタントからの対面サポートを受けられるのも魅力です。電話やメールでの相談もきめ細やかで、忙しい病院薬剤師でも転職活動を効率よく進めることができますよ。
ファルマスタッフ
ファルマスタッフは、調剤薬局大手の日本調剤株式会社のグループ会社、株式会社メディカルリソースが運営している転職サイトです。
全国の病院・クリニックの公開求人数はおよそ3,000件（非公開求人を除く・2021年11月9日時点 薬マニ編集部調べ）。
日本調剤系列の強みを生かし、地域密着型で病院・調剤薬局などに強いパイプを持っているのが特徴です。全国12拠点からコンサルタントが、求人を出している病院などに最大限足を運び、生の情報収集に努めています。
サイトの方針として転職を急かすことをしないため、「そもそも転職すべきか悩んでいる……」という状態の病院薬剤師の方でも気軽に相談できるでしょう。
薬キャリAGENT
| 探せる求人 | 雇用体系 | 相談方法 | 派遣求人 |
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※1エムスリーキャリア調べ
薬キャリエージェントは、インターネットで各種医療関連サービスを提供するエムスリーキャリア株式会社が運営している薬剤師専門の転職サイト。
エムスリーキャリア株式会社は医師専用の転職サイトも運営しています。薬キャリエージェントは病院や薬局、ドラッグストアなど幅広い求人案件を取り扱っており、病院の公開求人数は1,300件を越えています（非公開求人を除く・2024年2月19日時点 薬マニ編集部調べ）。
薬キャリエージェントはコンサルタントによる対面相談はありませんが、電話とメールで手厚いサポートをしてもらえるのが魅力です。無料登録で最短即日最大10件の非公開求人を紹介してくれるので、スピーディな転職にもおすすめですよ。
転職先の内情把握で、一人薬剤師を回避しよう！
処方せん応需枚数の少ないエリアの店舗や中小の個人薬局では、一人薬剤師を任されるケースが多いです。
一人薬剤師は会社の人員配置の問題であり、自分ひとりの努力で回避できる問題ではありません。一人薬剤師を避けるためには、一人薬剤師の環境にない調剤薬局に転職するのが現実的です。
店舗で一人薬剤師が常態化していないかどうか、内情を把握するためには地域の薬局情報に精通した転職コンサルタントを活用しましょう。
マイナビ・ファルマスタッフ・薬キャリエージェントの3社がとくにおすすめです。
一人薬剤師として働いた経験を生かして理想の働き方を選び、みなさんが活躍されることを、心から応援しています！
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